答えを教えないチャットボット、ソクラテス式の問いを設計する方法
生徒に答えではなく問いを返すソクラテス式チャットボットのプロンプト設計の原則と、補いの事例をまとめました。
生徒が「この問題の答えは何ですか」と聞いてきたとき、「どこまで解いたの」と問い返す先生が良い先生です。ソクラテス式のチャットボットは、この問い返しを自動化しようとする試みです。ところが初期設定のままのチャットボットは、親切に答えから差し出してしまいます。答えを我慢するチャットボットをつくるには、システムプロンプトに明示的な禁止事項と問いのルールを刻んでおかなければなりません。
問い返すチャットボットのためのプロンプトの原則
問いで導くチャットボットを設計するとき、次のルールをプロンプトに入れると効果が大きくなります。
- 正答を直接示すことの禁止: 生徒が3回以上試みる前には最終的な答えを言わないよう明示します。
- 一度に一つの問い: いくつもの問いを浴びせると生徒は圧倒されます。問いは一度に一つずつ、生徒が答えたら次へ進むようにします。
- 生徒の言葉を拾い直す: 生徒の表現をそのまま引用して、「さっき〜と言っていたけれど、それなら」のようにつなげます。
- 行き詰まったら難度を下げる: 生徒が二度続けて「わからない」と言ったら、もっと小さな問いに分けます。
このルールがなければ、チャットボットは最初の問いにすぐ解き方を吐き出してしまい、ソクラテス式は名ばかりになります。
よく崩れるところと、その補い
現場でソクラテス式のチャットボットが崩れる瞬間は、たいてい生徒の忍耐が先に尽きるときです。ある高校では問いばかりが返ってくるので、生徒がもどかしさから画面を閉じてしまうことが続きました。補いの手立ては単純でした。
- 問い3回ごとに一度は、小さな励ましや進み具合のまとめをはさみます。
- 生徒が「やめる」と入力したら、すぐにヒントモードへ切り替えます。
- 最後まで行き詰まったら、教員へつなぐ案内で締めくくります。
ソクラテス式の目的は生徒を試すことではなく、自分の力でもう一歩進ませることです。挫折が学びに勝ってしまっては困ります。
もう一つ覚えておきたいのは、すべての課題がソクラテス式に向いているわけではないという点です。単純な暗記や事実の確認のように、正答がはっきりしていて思考の過程が短い内容に問いばかりを返せば、生徒は時間の無駄だと感じます。問い返しは、解く過程が長く思考の段階がいくつもある問題、たとえば数学の証明や文章の論の組み立てのように、生徒が自分で道を見つけてこそ意味の大きい課題に使ってこそ、力を発揮します。どの課題に当てはめるかを見きわめる眼が、チャットボットの設計と同じくらい大切だということです。
まとめ
ソクラテス式のチャットボットは、正答の禁止、一度に一つの問い、生徒の言葉の拾い直し、行き詰まったら分けるというルールで仕上がります。ただし問いが挫折に変わる瞬間を感じ取り、そこから抜け出せる出口もあわせて設計しなければなりません。答えを我慢する技術と、生徒を手放さない心づかいがそろったとき、チャットボットはようやく良い問い手になります。思考の過程が長い一つ二つの課題にまず当てはめてみて、生徒の反応を見ながら慎重に範囲を広げていくやり方をお勧めします。よく整えた問い返しのルール一つは、いくつものクラスで長く再利用できますので、一度の設計がそのまま長く使える資産になります。

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